音楽が流れる工場、柔軟な勤務時間、
従業員思いの社長。働きやすい職場です!
津波で大きな被害に遭った、釜石・唐丹地区。地域の人口流出を抑えて復興させるには、水産業の再生が必要でした。そこで、培った水産加工技術を活かし、地域の人たちの働く場と生きがいをつくろうと、2011年8月に創業された釜石ヒカリフーズ。加工場には音楽が流れ、勤務時間や日数も柔軟に聞いてもらえるなど、働きやすい環境を整えています。
販売先は、大手飲食チェーンやスーパーなど
受注に生産が追い付かない状況
釜石ヒカリフーズは、主に釜石で水揚げされた魚介類や海藻類を原料とする水産加工を手がけています。生産品目は、いかやたこ、さんまの刺身、しめさば、わかめやめかぶの加工品など。これらを、全国に750店舗以上展開する居酒屋チェーンや生協、スーパーなどの大手流通サービス業を中心に販売しています。
「おかげさまで引き合いが相次ぎ、受注に生産が追い付かない状況です。現在、20名強の従業員がフル回転していますが、設備としてはあと10人分の余裕があり、できるだけ地元の方に働いていただきたいと考えています。職場は働きやすいと思いますので、ぜひ見学に来てみてください」と社長の佐藤さんは呼びかけます。
職場には音楽が流れ、生臭さは気にならず
出勤時間も柔軟で、働きやすい環境
その加工場を訪れてみると、音楽が流れていることに気がつきます。
「会社を始めた時、従業員の半分以上が仮設住宅生活で、気持ちがすさんだ状態でした。だからこそ、明るい音楽を聞きながら体を動かして働けば、気持ちも明るくなるだろうと考えて始めたのです」と佐藤さん。「朝出社した時に音楽がかかっていないと、事務に電話してかけてもらいます。何もかかっていないと変な感じがするようになりました(笑)」とパートの佐々木千穂子さんは言います。
また、加工場に足を踏み入れても、魚の生臭さはほとんど感じません。毎日しっかり清浄しているとのことです。
同社では、従業員の働き方は各自の都合に柔軟に合わせています。育児や介護などでフルに働けず、週2~3日となる場合でもアルバイトとして受け入れています。
「会社としてはフルタイムで働いていただきたいですが、そんなことも言っていられません。業務は、残業ができる人でカバーし合っています。“お互いさま”で協力し合えていますから、誰でも平等に休める風土ができていますね」と佐藤さん。給料も、平等です。正社員とパートでは時間あたりの金額が違うのが普通ですが、同社の場合は“同一労働、同一賃金”。正社員も時給からスタートしています。また、しっかり昇給も配慮されています。
「社長さんは、気を遣って従業員の意見をよく聞いてくれます。勤務時間も、夫の扶養から外れてしまう上限を超えないよう、調整してくれます。今後もずっとここで働きたいと思っています」(佐々木さん)
新しい加工技術の実用化で
釜石産のさばを“ブランドさば”に!
同社はいま、官公庁や大学と新しい加工技術の実用化に取り組んでいます。まず、溶けかけのシャーベットのような柔らかい氷「スラリーアイス」の利用研究。この氷を使うと魚が凍らないので、解凍時にうま味成分が流れ出さずに済む長期保存ができるようになります。さらに、釜石産のさばの蓄養(稚魚を成魚まで育てること)および活け締め加工・流通の実用化実験も手がけています。これらの技術により、釜石産のさばを「関さば」や「金華さば」に並ぶ“ブランドさば”に育てる取り組みにチャレンジ中。
「さばはキロ50~100円程度ですが、同じさばでもブランドになれば3~4倍で売ることができます。その収益で、従業員の給料や地域の復興に役立たせたいと考えています」と佐藤さんは意気込んでいます。
津波で職場が流出した地域の人のために
働く場所をつくり誇りを取り戻してもらう
佐藤さんは、東日本大震災まで釜石市の水産加工会社に勤務していました。
「被災して出身地の盛岡に帰ろうと考えたのですが、壊滅した街で生き残った自分一人、離れていいのか、と。そんな時、仕事で出会った漁協や被災した地域の方々から『佐藤さんに会社をつくってほしい』と言われたのです。その言葉に動かされました」
津波で職場が流出した地域の人にとっては、働く場所がないことが大きな不安でした。そこで佐藤さんは、前職で培った経験を活かし、水産加工業を復興させて地域の人が地域への誇りを取り戻してもらうためにと、一念発起して同社を立ち上げたのです。この決断を、釜石市は「企業立地協定」締結で支援。「通常、できたばかりの企業と自治体が企業立地協定を結ぶことなどあり得ません。非常時ということもあるでしょうが、当社の志や計画を認めていただけてありがたかったです。このおかげで信用がつき、大手企業との取引に道が拓けましたから」と佐藤さん。
そんな釜石ヒカリフーズは、まさに釜石の“光”のような存在といえそうです。
※企業のホームページに移動します
企業情報
社名 | 釜石ヒカリフーズ株式会社 |
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住所 | 釜石市唐丹町字小白浜568番地 |
電話番号 | 0193-55-3663 |
事業内容 | 岩手県釜石産いか、さんま、鮭、水たこ等を主原料とした生食向けなどの商品の加工・販売 |
従業員数 | 23名(社員・準社員 2016年5月現在) |
ホームページ | http://www.hikarifoods.jp |
プロフィール
釜石ヒカリフーズ株式会社
代表取締役
佐藤正一さん
盛岡市生まれ。東北銀行を経て1997年、釜石市の水産加工会社に入社。勤務先の工場が東日本大震災で撤退すると、2011年8月、釜石ヒカリフーズを創業。震災後県内第1号の新規企業となった。
釜石ヒカリフーズ株式会社
佐々木千穂子さん
1972年、釜石市生まれ。結婚後は専業主婦として過ごす。東日本大震災の津波で母親を亡くし、落ち着いた2013年から、釜石ヒカリフーズで働く。「釜石は静かで暮らしやすい」